産業保健調査研究報告

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北海道における中小企業の健康管理と環境改善の現状と今後の課題

調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所長 佐藤研介
共同研究者 産業保健相談員 岸 玲子
共同研究者 産業保健相談員 神山昭男


1.はじめに

北海道における産業構造は、かつてのエネルギー源であった石炭産業や林業等の衰退により大きく変遷し、広域地域に中、小規模事業所が散在している。従業員300人未満の事業所数は、27万7千事業所、従業員数214万5千人であり、そのうち49人未満の事業所は、27万1千事業所、158万人にものぼる。このため、当推進センターとしては当面、活動の対象となる中小規模事業所の産業保健活動、環境改善活動の実態を知ることが、その第一歩と考えてこれらの事業所ならびに産業医の活動状況について調査研究に取り組むこととした。

2.調査対象と方法

(1)調査対象
「常時50人以上を使用する事業所」として北海道労働基準局で把握している5,457事業所から、各労働基準監督署ごとに一定の割合で、無作為に1,172カ所を抽出した。産業医は、北海道医師会の産業医名簿に記載されている1,663人のうち、日本医師会認定産業医1,125人を対象に各郡市医師会別に一定数をできるだけ無作為になるように、816人を抽出した

(2)調査内容と方法
事業所に対しては、従業員数、事業の種類、産業医の選任状況、定期健康診断の実施機関、未実施の場合はその理由、事後措置のやりかた雇い入れ時の健康診断、特殊健康診断と事後措置、環境測定の実施状況、産業医からの労働衛生上の勧告の有無などである。
産業医に対しては、定期健康診断の企画・実施、個人票の点検・評価・事後措置の状況、作業環境測定、職場巡視の状況、特殊健康診断の実施状況、事業所に対する改善提案や勧告について、安全衛生委員会の出席状況などについて聞いた。事業所、産業医ともに無記名、郵送法で、回収した。調査時期は平成7年12月から1ヶ月間であった。回収率は事業所では46.0%産業医は53.7%であった

3.調査結果と考察

(1)事業所調査
産業医別にみると、「製造業」が35.5%と最も多く、次いで「建設業」「運輸業」「サービス業」の順であった。製造業の内訳では食品が最も多く32.5%、次いで家具・木工品、電気・機器、土石窯業の順であった。従業員の規模別にみると、「50~99人」の事業所が45.8%とほぼ半数を占め、次いで「100~199人」30.6%「200~299人」が10.5%であった。「300人以上」の事業所は7%と少なかった。
「有害業務がある」事業所が全体では25.2%で、「有害業務」の内訳では、有機溶剤、粉塵振動、騒音、特定化学物質の順であった。
産業医を選任している事業所を従業員規模別に見ると、「50人未満」の事業所では60%と低かった。「50~99人」の事業所でも「産業医を選任していない」事業所が10.5%にのぼった。産業医を選任しない理由は、「必要がない」が35.7%で、次いで「適当な産業医が見つからない」が10.7%、「予算上の都合で選任できない」が8.9%であった。
定期健康診断の実施状況を見ると、実施率は全体として、98.9%と高いが、雇入れ時健康診断は、「実施している」が74.8%、「実施していない」が24.7%であった。
作業環境測定は、全体の26.8%で法にのっとった環境測定を実施している。内容は事業所空調が最も多く、次いで、粉塵、騒音、振動、有機溶剤などが多かった。作業環境測定をしていない理由で一番多いのが「測定の必要性がない」で43.4%。次いで、「測定する業務がない」36.1%であった。「測定すべきと知らなかった」が4.0%、「測定実施機関がわからない」が2.6%であった。
産業医からの勧告の有無は、「勧告を受けたことがある」は全体の6.6%で、内容は「健康管理面」が62.2%、次いで「労働作業環境」16.2%、「労働作業姿勢、労働様態」2.7%であった。
今回は回収率が50%前後であったことから比較的、衛生管理に熱心な事業所の標本と考えられる。それでもいくつかの課題が浮き彫りになった。今後の安全衛生活動のために知りたいと考えている知識や技術の把握、研修や勉強会へ参加の保証など、北海道の産業保健活動のレベルアップにつながるようなより詳細な調査が必要である。特に従業員50人未満の事業所については「名簿がない」ため今回は調査を見送ったが北海道の働く人々の7割はこれらの小規模事業所で働いていることを考えると次回の事業調査ではより対象を広げていく必要があろう

(2)産業医を対象にした調査
産業医は、「専属」が12.1%、「嘱託」は82.4%であった。産業医が担当している事業所の数では、「2~3事業所」が、38.6%と一番多かった。
定期健康診断の計画・実施については、「相談がある」は全体では56.8%、「例年通りなので相談がない」が27.4%、「事前相談がない」は10.7%であった。
定期健康診断後に、有所見者に対して、事後措置、指導をしているかについて聞いたが、「行っている」が76.0%、定期健康診断実施後に健康診断の個人票の点検・評価を行っているかについては、「個人票の点検を行っている」が73.7%であった。従業員規模別に見ても、全体の傾向とほぼ同じであった。
職場巡視は、「行っている」が38.1%「していない」が56.6%であった。作業環境測定結果の点検の有無については、「点検している」が26.5%、「点検していない」が64.8%であった。点検しない理由として、「環境測定の結果を事業所で見せてくれない」が38.0%、「時間がなく、対応不能」が20.8%、「わからないので見ない」が4.9%であった。
特殊健康診断実施について、事業所から「相談がある」は全体の41.6%、特殊健康診断の実施機関としては、「企業外検診機関」が、31.5%「産業医の医療機関」が31.1%となっていた。「特殊健康診断個人票の点検を行っている」は42.9%であった。
事業主に対する勧告については、「行ったことがある」が29.0%、「ない」が44.5%であった。勧告を行った結果、「作業環境が改善された」が23.1%「勧告を行っても無視された」が3.7%であった。200人以上の事業所で改善された割合が高かった。
「安全衛生委員会」については、「出席している」が18.5%であった。
調査結果を見ると職場巡視や安全委員会への参加率が低いが、大きな理由として「事業所よりの巡視の依頼がない」や「安全委員会への参加要請がなされていない」ことがあげられている。健康診断などの相談は60%近いことを考えると、事業所の側が産業医に対する期待を健康管理面に限局して考えがちなのかもしれない。産業医活動の範囲は、本来もっと幅広く、労働条件の改善や作業環境改善を通じて、健康に対するリスク評価や作業に関連した健康影響のサーベイランス、職業上の事故や病気の疫学的な分析など、職業生活の各面を視野に入れた幅広い包括的なサービスであること、そのための現場での産業医の活用を、事業所にもっと理解してもらう必要があろう。
一方、産業医から事業主に対する勧告については、「勧告を行ったことがある」が3割近くその結果、「作業環境等が改善された」が23.1%で、「勧告を行っても無視された」は3.7%に過ぎなかった。しかし、前に述べた事業所調査での産業医からの勧告の有無は、「勧告を受けたことがある」は全体の6.6%、「勧告を受けたことがない」は82.1%であった。回答を寄せた比較的熱心に活動を進めている産業医は、積極的に事業所に職場改善のアプローチを行っているが、全道の事業所全体での活動をみると今後より一層の産業医の活動が期待されよう。

4.まとめ

北海道内全ての中、小規模事業所の実態を解明することは、物理的にも極めて困難なために今回は一部の事業所に限らざるを得なかったがある程度、その実態を浮き彫りにすることが出来たと考えられる。北海道の今後の産業保健活動の基礎資料とるすとともに、事業所、産業医をはじめとする産業保健関係者に幅広く周知をはかり、役立てることが出来れば幸いである。
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北海道における衛生管理者の労働衛生管理に対する取り組みに関する実態調査

調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所長 佐藤研介
共同研究者 産業保健推進センター相談員 古屋統
共同研究者 産業保健推進センター相談員 岸玲子

1.はじめに

我が国の産業構造や作業環境は大きく変貌し、産業保健関係者のたゆまぬ努力も加わって職業病の発生は激減した。しかし一方で我が国の人口構造も変化し、高齢化社会が進むにつれて中高年労働者が増加し定期健康診断での有所見率が37%を越えるような状況となり職域での健康管理の重要性が一層増すなかで平成8年10月に労働安全衛生法の一部改正が行われた。
職域における健康管理、環境管理を確実にするためには、職域内の情報を集約しうる衛生管理者の活動が必須であるが、現在、大企業はともかくとして小規模事業所における衛生管理者の活動状況は必ずしも活発とは言えず、産業医との連携も不十分といえる状況にある。このような状況から全国的に衛生管理者の組織化の動きがあり、北海道においても、平成8年9月に「北海道衛生管理者協議会」が発足する運びとなった。しかし、ここに至るまでの経緯は、衛生管理者自らの動きというよりも、むしろ行政主導型の要因が多く加わっていたことも見逃せない。

他方、医師会産業医学部会などにおいても、衛生管理者に対する評価や要望などが話題とされることは極めて少ない現状にあるため、我々は今年度の課題として本道における衛生管理者の活動状況・当面の問題点などの把握を試みることとした。

2.調査対象と方法

調査対象事業所は、「常時50人以上を使用する事業所」として、北海道労働基準局で把握している5,521事業所から、各労働基準監督署ごとに一定の割合で、無作為に2,063カ所を抽出した。
調査内容は企業規模業種、衛生管理者数、資格取得後の年数、衛生管理者(回答者)の仕事内容、役職、衛生管理のための年間事業計画作成、職場巡視、衛生委員会の有無、労働衛生管理の重点項目、産業医との面談有無、健康診断結果の通知、再検査結果の確認、健康診断の事後措置、産業医へ希望すること、どこから労働衛生に関する情報や知識を得ているか、産業保健推進センター・地域産業保健センターを知っているか、衛生管理者協議会に参加の意志などを無記名、郵送法で個別に回収した。回収率は40.2%であった。

3.調査結果

従業員の規模別に見ると「55~99人」の事業所が49.6%とほぼ半数を占め、次いで「100~199人」30.5%、「200~299人」が9.2%であった。「300人以上」の事業所は3.6%で、50人以上200人未満の事業所で全体の89%を占めていた。
事業所内の衛生管理者の人数は「1人」が54.2%と最も多く、ついで「2人」が21.2%「3人」が8.8%の順である。
衛生管理者になってからの年数は、「20年以上」が28.6%と最も多く、ついで「10-20年未満」22.9%、「5-10年未満」15.9%の順であった。衛生管理者としての仕事の内容は「衛生管理に関与しているが他の仕事もやっている」が74.6%と最も多く、ついで「名目上は衛生管理者となっているが、実際には他の仕事をしている」が18.0%の順であった。衛生管理者の役職は「課長職クラス」が28.7%と最も多く、ついで「部長職または管理職」26.3%、「係長クラス」11.4%の順となっている。衛生管理のための年間事業計画作成では、60.4%の企業が「作成している」と答え「作成していない」企業は37.7%にとどまっている。週1回の職場巡視を実施「している」のは54.8%「していない」は43.1%となっている。労働衛生管理者を推進する上で、重点的に実施したい内容は「健康診断の事後措置」が51.7%と最も多く、ついで「快適職場づくり」38.6%「作業環境の改善」37.3%の順となっている。産業医が選任されている企業のうち、面談することが「ある」と答えたものは53.3%「ない」は34.8%であり、産業医との面談をすることが「ある」と答えた中で、1年間での面談回数は「2回」が16.3%で最も多く、ついで「1回」15.5%、「3-5回」10.8%となっていた。健康診断の結果を何らかの方法で直接本人に「通知している」は94.0%に達し、「通知していない」は2.4%にとどまった。再検査の結果確認については「している」が76.4%、「していない」は19.9%であったが、健康診断に基づく事後措置を「実施している」が71.6%にのぼり「していない」は24.0%であった。
産業医に望むこととしては「健康相談」が69.9%と最も多く、ついで「健康診断の事後措置」63.6%、「健康・衛生教育」50.8%となっている。産業保健推進センターは「知らない」が54.1%で、「知っている」の41.3%を上回っており地域産業保健センターは「知らない」の58.4%が「知っている」37.5%を上回っていた。衛生管理者の組織(協議会)に参加の意志があるかの問いには「わからない」が46.0%ともっとも多く、ついで「参加したい」28.0%、「参加しない」20.6%の順となっていた。

4.結果と考察

本調査の全体集計からみると、北海道全域での衛生管理者数は事業所毎をみてもほぼ充足されているが、経験年数を20年以上の者が28.6%と最も多く、課長級以上の役職者が55%を占めており名目上の衛生管理者が18%にのぼっている。実際に衛生管理上の仕事をしている者であっても他の業務との兼務者が74.6%であり、先任者は10%に満たなかった。産業医との連携の状況をみると、産業医と面談したことがある者は53.3%と半数を上回るが、一緒に巡視している者は39%に過ぎず連携の不十分さが窺がえる。近年、各事業所の作業環境は産業構造が変化してきたことも有って著名に改善され、衛生管理者の業務は作業環境改善よりも健康管理に重点がかたむく傾向にあり、健康診断とその事後措置に関することを最重点事項とする者が52%にのぼっている。
しかし、一方で健康診断の結果通知が94%に達しているのにも関わらず、有所見者に対する事後措置を実施していないと答えた者が24%にものぼる事実もある。
平成8年10月に労働安全衛生法の一部改正があり、職場における労働者の健康管理体制の充実に重点が置かれたことにより産業医と衛生管理者の連携・協力の重要性が増してきた。更に、産業医の選任されていない小規模事業所における健康診断の保健指導等は地域産業保健センターを活用することが必要となるが、衛生管理者が産業保健推進センターや、地域産業保健センターを知らないと答えた者が50%を上回っていた。
衛生管理者が労働衛生に関する情報を得るのは主として、図書・業界誌・災害防止団体等によると返答し更に、新設された労働衛生管理者協議会に参加する意志があると答えた者が僅か28%に過ぎないこと等から事業主を含めて、衛生管理者に対しての労働衛生・労働保健に関する情報の伝達、啓蒙等に産業保健推進センターがより積極的に関与すべきであろう。
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北海道におけるTHPの取り組みについて
1サービス機関からみたTHP

調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所 長 佐藤研介
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 清田典宏
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 古屋統

1.はじめに

THPが始まって10年が経過したが種々の補助制度にもかかわらず順調な発展をしているとは言い難い。このようなTHPの現状を分析し、よりよい発展のために利用できないかと本研究を行った。北海道のTHPに占める北海道労働保健管理協会の割合は全体として最も低かったときでも約60%であり補助なし事業では80%を越えている。この意味で北海道労働保健管理協会のTHPの状態を分析することは北海道におけるTHPの今後の動向を示すことになると思われる。

2.対象と方法

平成元年度から平成9年度までに北海道労働保健管理協会でTHPを受診した124事業場のうちTHP開始後4年以上経過した109事業場を調査の対象とした。分析の方法としてアンケート方式を考えたが、質問の内容上正確に答え難い部分が多いと考え、北海道労働保健管理協会のTHPの健診・営業担当者の分析にたよることとした。担当者全員がTHPの勧誘・申し込みの受け付けから、実施・健康測定結果報告書(以下総括表)を持参しての説明まで行っており、事業場の事情、雰囲気、受信者の気持ちなどを熟知しており、合議による分析が充分可能であると判断した。統計学的手法として重回帰分析を選んだ。分析内容はTHPの開始、継続、終了の各3時期の事業場の対応とその理由により考えることとした。しかし分析項目がそれぞれの時期で20~30になったため、これらの要素を考慮に入れ次の表1のように分析項目を決定した。目的変数に実施回数を説明変数に6つの項目を選んだ。なおこの分類を高い、低いなどの2項目でなく中間値をとり3~5項目にするようにもかんがえたが、討議中にあまりにも中間値にかたよる傾向が出たためあえて2項目とした。

表1 目的変数、説明変数とその内容

目的変数 実施回数 4回以上 1
3回 まで 0
説明変数1 THP開始時の事業場の理解度 あ り1
な し0
説明変数2 実施経過中の対象者の理解度 変化あ り1
変化な し0
説明変数3 総括表に対する関心 あ り1
な し0
説明変数4 助成金に対する依存度 低 い 1
高 い 0
説明変数5 健康診断全般に対する
事業場の理解度
高 い 1
低 い 0
説明変数6 事業場の健康に対する関心 高 い 1
低 い 0


対象となった事業場は109事業場でそのうち4回以上THPを実施した事業場は29事業場であった。

3.重回帰分析

最初に目的変数に実施回数をその他のすべての項目を説明変数に選んで重回帰分析を行った。重相関係数は0.7875で標準回帰係数の最も高かったのは「助成金への依存度」であり、1%レベルで有意であった。赤池のAICは41.75、マローズのCPは7であった。

表2 回帰係数1


回帰係数 標準回帰
係数
定数項 -0.02384 0
事業場の理解度 -0.14025 -0.13857
対象者の理解度 0.010176 0.009396
総括表への関心 0.053465 0.057998
助成金への依存度 0.562409 0.61653
健診に対する理解度 0.181221 0.18573
健康に対する関心 0.132765 0.13804


これらの点を考慮に入れ最適の組み合わせを試みた。標準回帰係数の最も高かった3つの説明変数の組み合わせを変え、重回帰分析を行った結果、表3の「助成金への依存度」「健診に対する理解度」の2つを選んだ場合が赤池のAICは39.72、マローズのCPは3と最小の数値を示した。重相関係数は0.7739であった。

表3 回帰係数2


回帰係数 標準回帰
係数
定数項 -0.03058 0
助成金への依存度 0.588323 0.644939
健診に対する理解度 0.25663 0.26447


これらの結果から求める回帰式は
Y=-0.030582+0.588323X1+0.25663X2となる。X1は「助成金への依存度」、X2は「健診に対する理解度」を示す。つまり「助成金への依存度」が低く、「健診に対する理解度」が高ければ81.4%の確率で4年以上のTHPの継続が期待できる。

4.考察

重回帰分析の結果からみると、THPを4年以上継続させるため最も重要な要素は「助成金への依存度の低さ」であり次いで「健診に対する理解度の高さ」である。これらは事業場側に健診に対しての出費を容認できる経済基盤があることを意味する。定期健康診断と比べれば4年目以降のTHPは内容は別として事業場側にかなりの経済負担を要求する。問題はこの出費増に対し事業場側が納得のいく利益を受け取った、または受け取れるであろうと理解してもらえるかどうかという点である。39事業場が関心を示しながら回帰係数0.052465と低値をしめした「総括表への関心」は現在の総括表がTHPの最大の目的である疾病の一次予防という点から見ても事業場側および各個人に対して、具体的、かつ明確な、しかも実行可能な提案を十分にはしていないからであろう。これらの点がクリアできれば事業場側の「健康に対する関心」や「対象者の理解度」もさらに上昇する可能性は高い。一方で短時間で現状を理解してもらい、生活習慣の改善のための行動のきっかけ作りを提示しなければならない個人指導もTHPの普及という問題解決のための重要な要素を含んでいる。なおいっそうの地道な努力の継続が必要である。

5.産業保健推進センターがTHP普及のために行える役割

事業場に対する啓蒙活動としてパンフレットの配布や相談員による直接の説明がある。その他THPの説明会、講習会も考えられる。
サービス機関、指導機関に対する支援としてTHP実施希望の事業場の紹介や、各指導担当者対象の講習会がある。

6.まとめ

北海道労働保健管理協会でTHPを受診し、THP初回実施から4年以上経過した109事業場の現状、意識などの分類を行い重回帰分析を行った。求められた回帰式は
Y=-0.030582+0.588323X1+0.25663X2
であった。X1は「助成金への依存度」、X2は「健診に対する理解度」を示す。さらにTHPの更なる発展のためにサービス機関、産業保健推進センターの行うべき役割にも考察を加えた。
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職場のストレス心身反応と対処行動
-職場と家族への心配、生きがい意識-

調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所 長 佐藤研介
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 杉山善朗
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 小片基

はじめに

いうまでもなく、産業保健推進センターの目標は、職場従事者が、健康で生きがいと労働意欲をもって積極的に仕事に従事できるように支援することにあるが本報告は職場のメンタルヘルスに関して検討したものである。

調査

調査対象事業は、札幌市内および札幌市以外の製造1、事務2、販売19、計22であった。製造業務の人数は224名、事務業務の人数は(1)56名(2)10名、計66名、販売業務の人数は769名合計1,059名であった。
平成9年10月~12月に調査票を配布、書き留め法により実施した。調査票は、Ⅰ(イ)健康状態、(ロ)生活形態、(ハ)家族、(ニ)職場、(ホ)交友について「生活特性」をたずねた5問、Ⅱストレス心身反応についてたずねた40問、Ⅲ対人関係を主とするストレス対処行動様式を問う14問、Ⅳ「生きがい」意識についてたずねた20問、合計79問であった。

結果

職業従事者の生きがい意識を目標変数、生活特性と職場メンタルヘルス得点を変数とする多変量解析1種を実施した。図には、算出された諸特性のカテゴリーウエイトが示されており、生きがい意識との重相関係数は0.670であって、高い満足すべき値を得た。

こちらから図を参照してください

(1)~(4)は略

(5) 家族の心配事:大変な心配事があるとき、生きがいにとって明らかなマイナス条件である。

(6) 職場の心配事:心配なことがない条件と心配なことがあるときの生きがい意識への増減の両者は、明らかであった。

(7) 親戚との交際、町内会への参加:これらの関係があるときは、大きくはないが生きがい意識にプラスの働きをもっている。

(8) ストレス心身反応:ストレス心身反応が弱いとき(得点が低い)、生きがい意識は増大し、ストレス心身反応が強い時(得点が高い)、生きがい意識は減弱し、その差は顕著である。

(9) 対処行動:対人関係ストレスに積極的に対処行動をするときは、生きがい意識を高め、消極的行動や孤立的対処行動が少ない時も同様であった。反対に積極的対処行動が少ないとき、消極的対処行動や孤立的対処行動が多いときは、生きがい意識が減弱することが明らかであった。

まとめ

(1) 対人関係ストレス対処行動は、若い人達よりも40歳代、50歳代において積極的であり、概して男性よりも女性が活発であることがわかった。
生きがい意識の強さも高い年代で明らかであった。これは、高い年代や女性において自分の現在を受容できているか、家族や仕事の将来への期待を抱いていることを表しているのであろう。

(2) 家族や仕事の心配が無いか、弱いときには、強い心配があるときに比べて、ストレス心身反応が低下し、生きがい意識が高くなることが明らかであった。さらに孤立、憂うつ、不快感情で作られる孤立的対処行動は、ストレス心身反応、家族と仕事への心配、生きがい意識に対して明らかなマイナス効果を示した。

(3) 以前のデータによると、50歳~54歳の向老期前半の年代は、55歳~59歳の向老期後半に比べ生きがいの意識増強の、条件となっていることが示された。50歳代前半においてまだ十分に残っている活性力と、50歳代後での減弱が年代の前・後半の差を示したのかも知れないが、本報告書では、このような分析を行っていないので不明である。

(4) これまでの全体の調査結果を総括すると、職場メンタルヘルスを推進するポイントは2つあげることができる。
第1は、生きがい意識増強へプラス効果をもたらす点に関することである。家族への心配と職場に関する心配を支える、職場メンタルヘルスの保持と推進が重要であることが示唆された。
第2は、働く人自身の自立にかかわる問題である。ストレスに積極的な対処行動をとることは、マイナスであるという明らかな関係が認められた。このような個人の行動特性には生来的な要素もあろうが、自己学習や生活習慣に由来する部分もあることは否めない。
この点からも職場のメンタルヘルスの生活習慣的な心理社会的分野が欠かせないものと考えられる。
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社会福祉介護職の労働実態と健康管理上の問題点についての調査研究

調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所 長 三宅浩次
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 岸 玲子
共同研究者 北海道大学医学部公衆衛生学講座研究生(医師) 築島恵理
共同研究者 北海道大学医学部公衆衛生学講座大学院生(医師) 近藤恭子

はじめに(調査目的)

現在、我が国の65歳以上の高齢者は、6人に1人の割合であり、40年後には3人に1人が高齢者となる超高齢社会が到来することが予測される。高齢化に伴って寝たきり状態や痴呆症状のある高齢者が増えることが見込まれており、介護の長期化や介護する家族の高齢化の問題から家族による介護では十分な対応が困難となってくる。このような高齢者の介護問題に対応すべく、在宅介護を支援するホームヘルパーの拡充がすすめられ、2000年には老人医療と老人福祉を一体化させた介護保険制度の導入が行われようとしている。この流れを支えていくのがホームヘルパーであり、制度の整備のみならずホームヘルパーをとりまく労働環境、身体的・精神的健康問題を把握することは重要な課題であると考える。
そこで、ホームヘルパーの健康を守り、やりがいのある仕事として発展させていくための対策をみいだすことを目的として、労働実態や心身の健康状態、「ひとり職場」としての問題や職場要因を明らかにするために本調査を企画実施した。

調査対象と方法

調査対象となった事業所は、札幌市からホームヘルプ事業の委託を受けている在宅介護支援センター・財団法人・民間企業35ヶ所であり、そのうち調査への協力が得られたのは34ヶ所であた。34ヶ所の施設調査の集計では、全ホームヘルパー数は1519人、主任ヘルパー4.0%(61人)、主任ヘルパー以外の常勤者11.4%(173人)、主任ヘルパー以外の非常勤者84.6%(1285人)であった。
調査対象者は、全ての常勤者と1998年11月から12月までに週平均15時間以上勤務していた非常勤者、合計433人であった。各事業所毎に個人調査票・施設調査票と個人用返信封筒を郵送し調査対象者に配布していただくように依頼した。調査は無記名で行い、各人「が返信用封筒を用いて返送するかたちで回収を行った。
本調査以前に現在介護職に従事しているホームヘルパー3人、施設介護職員2人、看護婦1人お面接調査を行った。
次に面接調査での意見と「老人ケアスタッフのストレスと心身の健康」(東京都老人総合研究所1997)、「高齢者福祉とホームヘルプ職調査」(連合総合生活開発研究所1997)の調査票を参考にし、労働状況、職場要因などの質問項目を作成した。健康状態に関して、身体的側面はCFSI(蓄積的疲労徴候調査)より一般的疲労・身体不調の項目を選択し、精神的側面は「燃えつき状態」を測定するMBI(maslachBumout Inventory)を用い、ソーシャル・サポート、満足度についての質問項目を追加した。統計解析にはSASを用いて行った。

結果

調査対象者のうち調査票の配布が可能であったのは303人、回答が得られたのは243人(回収率80.2%)であった。男性2人と身解答者1人、勤務形態が不明確である7人を除外した結果、女性233人(43.2±10.7歳)となった。このうち、日勤者191人主任ヘルパー38人、常勤者83人、非常勤者69人)について、燃えつき状態、一般疲労、身体不調を従属変数とし、属性、経験年数、勤務時間、労働状況、ソーシャルサポート、満足度との関連性について解析統計を行い結果をしめす。

(1) 対象者の属性 年齢分布をみると40代の割合が最も高く42.1%(80人)であり、平均年齢45.7±9.3歳であった。教育歴では45.6%(87人)が高校卒業、40.3%(77人)が短大・専門学校卒業であった。家庭状況では配偶者がありが57.6%(110人)、死別または離別が31.9%(61人)、未婚者が10.5%(20人)であり、子供の数は平均1.6人(末子年齢19.3歳)であった。


(2) 労働状 主任ヘルパー、常勤者、非常勤者の3群間での多重比較の結果をしめす。(表1)

表1 勤務形態別の労働状況



主任ヘルパー
mean(SD)
常勤者
mean(SD)
非常勤者
mean(SD)
ヘルパーの経験年数 b.c 6.2( 6.7) 6.3( 5.7) 2.4( 1.8)
現在の職場経験年数 b.c 4.5( 4.3) 4.6( 4.4) 1.9( 1.5)
勤務日数(日/月)
21.3( 4.7) 20.1( 1.4) 20.3( 4.0)
勤務時間(時間/週) a.b.c 38.2( 9.8) 33.9( 8.8) 19.7( 7.0)
休日勤務回数(/月)
2.8( 2.4) 3.9( 2.4) 3.3( 2.2)
時間外勤務回数(/月) b 4.2( 3.9) 7.3( 3.9) 10.1( 8.9)
平均訪問世帯数(/日) a 1.4( 1.5) 2.5( 2.2) 2.0( 2.1)
介護サービス時間(時間/週) b 10.0( 8.0) 16.7( 6.6) 18.2( 6.8)
事務作業時間(時間/週) a.b.c 24.9(13.0) 6.4( 6.8) 3.0( 3.6)
月収入(万円)
183(272) 210(300) 168(245)


a:主任ヘルパーと常勤者の間に有意差あり(p<0.05)
b:主任ヘルパーと非常勤者の間で有意差あり(p<0.05)
c:常勤者と非常勤者の間で有意差あり(p<0.05)


(3) 心身の健康状態身体的側面については、一般疲労(F2)の訴え率は主任ヘルパーでは非常勤者よりも有意に高く、常勤者では非常勤者よりも有意に高かった。身体不調(F7)の訴え率では常勤者は非常勤者よりも有意高かった(図1,p<0.05)。精神的側面については、情緒的疲弊(EE)の頻度と強さの項目と非人格化(DP)の頻度の項目で、常勤者は非常勤者よりも有意に高かった(図2,p<0.05)。





(4) 重回帰分析MBIのうち燃えつき状態を最も反映すると言われているEEを従属変数とし、年齢・勤務形態・職責の有無・経験年数・勤務時間・訪問世帯数・収入・仕事量・仕事のコントロール/将来に対する不安・ソーシャルサポート・満足度を孤立変数として重回帰分析(stepwise)を行い、結果を表2にしめす。
同様に、一般疲労と身体不調を従属変数として重回帰分析(stepwise)を行ったところ、F2では仕事量で有意差が認められ、F7では収入、仕事量、仕事のコントロールで有意差が認められた。

表2 情緒的疲弊(EE)の有意に関する項目(十回帰分析)

EEの頻度(R squared:0.5) 標準偏回帰係数 p value
勤務形態(常勤>非常勤) 6.32 <0.01
平均訪問世帯数 0.85 p=0.11
仕事量 5.15 p=0.05
仕事のコントロール -5.47 <0.05
仕事内容に対する満足度 -7.58 <0.01
EEの強さ(R squared:0.6) 標準偏回帰係数 p value
勤務形態(常勤>非常勤) 5.73 <0.05
平均訪問世帯数 1.35 <0.05
収入 -0.01 p=0.11
仕事量 4.8 p=0.08
仕事のコントロール -8.84 <0.01
体力的不安 9.7 <0.01
ソーシャル・サポート(同僚) 5.18 <0.05
仕事内容に対する満足度 -6.67 <0.05
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24時間巡回型ホームヘルパーの労働実態と
精神的疲労に関する調査研究

調査態勢
研究代表者 北海道産業保健推進センター所長 三宅浩次
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 岸 玲子
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 清田典宏
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 古屋統
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 近藤恭子
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 築島恵理
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 笹井 世津子
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 増地あゆみ


1.調査研究の趣旨・目的

札幌市の24時間巡回型ホームヘルプサービスに従事しているヘルパー約20人に対し、生物学的・生理学的指標を用いた労働負担と自覚症状の評価、生活習慣、慢性疲労状態・精神的健康度の把握、職務満足度、それに関連する要因について個人調査票を用いて明らかにすることを目的に調査研究を実施した。

2.調査研究の背景・必要性

今後、65歳以上の高齢者は急速に増加し、寝たきり状態や痴呆症状のある高齢者が急速に増え、介護の長期化や介護する家族の高齢化の問題から家族による介護では十分な対応が困難となってくることが予測される。高齢者側の要求としても、在宅で介護や治療を受けながら家族や近隣の人々とのふれあいのある生活を維持することが望まれている。このような状況の中、札幌市では平成8年に24時間巡回型ホームヘルプサービスが導入され、夜間の介護サービスを提供してきた。このサービスを支えていくのが巡回ホームヘルパーであるが、平成10年度の調査結果では、24時間巡回型ホームヘルパーは20代から30代の若い女性が多いが、腰痛や消化器症状を始めとする身体症状を訴える率は高く、労働に対する達成感が低く、仕事にやりがいを感じにくいことが示唆された。今後の在宅福祉サービスを担っていく若いヘルパーの個人的達成感や職務満足度が低いことは、介護サービスの質の向上、自己実現可能な専門職としての発展のためには大きな問題であり、その要因について明らかにしていくことは重要な課題であると考える。

3.調査研究の成果

GHQの結果からは、「不安・不眠」で中等度以上の症状が認められる人が多く、身体的側面でも睡眠の浅さを訴える人が半数以上に及んでおり、夜勤労働に伴う睡眠障害と考えられた。また、生活習慣から飲酒率は8割以上であり、約3回/週、エタノール量140ml/週となっており、不規則な睡眠パターンや過度の緊張感を和らげるためにアルコールを用いている可能性が考えられた。交代制勤務の心身への影響が危ぶまれるからこそ、生活習慣やストレス・コーピングなどについての教育的対策も必要と思われた。生理学的指標と自覚症状の結果より、夜勤中には高いストレスレベルの持続と同時に覚醒レベルは休日の午前9時と同程度であることが分かった。また、一般的精神覚醒度の指標となるアドレナリン排泄量は夜勤中に低下しており、主観的指標である覚醒レベルの夜勤中の低下と一致した結果となっていた。夜勤中の精神覚醒度を上げることは勤務中の事故防止や介護業務の質を上げることにつながるものであり、そのための方策を検討していくことが必要となる。唾液中コルチゾール濃度の結果からは、休日・日勤のコルチゾールの日内変動に有意差は認められなかった。夜勤労働によるコルチゾールの日内変動の抑制は明らかであり先行研究と一致した結果であった。HRV解析に先立っておこなったタイムスタディによって、5分から20分の短時間で、介護業務、運転業務、事務作業を繰り返すという巡回型ヘルパー業務の流れの特徴が明らかになった。平均R-R間隔は、予想どおり介護業務時に小さく、睡眠時に大きかったが、予想に反して日勤と夜勤における睡眠の差はみられなかった。交感神経活動性を示すLF成分は、日勤時、夜勤時とも介護業務で大きくなっておりこれは対人サービスであるという精神的緊張とともに、身体活動を多く含む業務であることの結果と考えられた。運転時のLF 成分が、日勤時には介護業務と同等の人が多いのに対して、夜勤時では全員が介護業務時より小さくなっており、夜勤の運転時に交感神経活動性が保たれていない可能性を示唆するものと考えられたが、この差は同じ運転業務での日勤と夜勤の差を検討しても有意差とはならなかった。

4.成果の活用状況及び活用予定

調査結果報告書については、調査対象者及び関係事業者団体等に配布するとともに、抄録を情報紙に掲載し広報を行った。今後は、調査結果をもとに介護労働の関係事業者等や産業保健スタッフに対し腰痛、精神的ストレスの予防についての助言や保健指導(生活指導、食事指導)、労働ストレスカウンセリング研修の実施などの支援を行っていくこととしている。
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高齢労働者の健康および体力の保持増進に
貢献する生活要因の探索に関する研究

調査研究体制
主任研究者 北海道産業保健推進センター所長 三宅浩次
共同研究者 北海道産業保健推進センター産業保健相談員 清田典宏
共同研究者 北海道産業保健推進センター産業保健相談員 原渕泉
共同研究者 札幌医科大学医学部運動科学教室 岡野五郎


調査研究の趣旨・目的

労働者の年齢構成が高齢化している。その一方で定年や年金支給年齢の引き上げなど、労働者を取り巻く環境は厳しい。高齢においても就業が可能であるためには、健康状態と体力が大きく影響する。全体的な労働環境は改善の方向にあるが、労働環境とともに労働者自身の老化現象による健康状態や体力の低下要因を考慮した研究が必要である。
本調査研究では、高齢労働者の健康および体力に及ぼす各種要因を探索し、その予防可能性について考察した。

調査対象と調査法

調査対象として、北海道全域を企業範囲としているA社に協力を依頼した。調査対象者として50歳代の全社員640名に調査票を配付し、記入させた。回収数427枚で、そのうち男子社員でほとんどの項目に記入してある調査票401枚を解析対象とした。
調査項目は、体格、職種、仕事中の活動度、1日歩行時間、スポーツまたは運動習慣(夏と冬)、食事習慣、喫煙・飲酒習慣、睡眠時間、ストレス度、休暇取得、自覚的健康度、現病歴、検診受診、主観的体力(持久力と筋力)、職種・職場満足度、65歳まで働く自信、65歳時の仕事量、身体健康度(松本寿吉式)等である。仕事中の活動度から休暇取得までについては、40歳代の状況も質問した。
多変量解析については、SPSSを使用した。

結 果

解析対象者401名の年齢は50歳から59歳で、平均52.7歳。BMIの平均は24.2で、25以上のものが34.2%とやや肥満傾向がみられる。夜勤勤務があるもの29%、座作業が多いと答えたもの83%、1日1時間以上の重い筋作業を行っていると答えたものは4%であった。平日の1日歩行時間は平均51分、睡眠時間は6.9時間と答えている。
自覚的健康度、体力および職種・職場満足度については表1のとおりである。

表1自覚的健康度、体力および
職種・職場満足度(%)
自覚的健康度
非常に不健康
不健康
ふつう
健康
非常に健康

内科的疾患
やや重い疾患
軽い疾患
ない

自覚的持久力
非常にない
ない
ふつう
ある
非常にある

自覚的筋力
非常にない
ない
ふつう
ある
非常にある

1.8
15.3
61.5
20.8
0.8


5.5
33.7
60.8


2.8
24.5
49.5
20.5
2.8


4.3
26.1
49.5
17.1
3.0

職種満足
非常に不満
不満
どちらとも言えない
満足
非常に満足

職場満足
非常に不満
不満
どちらとも言えない
満足
非常に満足

65歳まで働く自信
全くない
ややない
どちらとも言えない
ややある
大いにある

65歳時の仕事量
できない
3割程度
半分位
7-8割位
今とほぼ同じ

2.3
7.5
30.2
56.0
4.0


2.0
10.5
19.8
53.5
3.0


5.0
12.8
19.8
38.8
23.6


2.5
1.0
16.0
50.1
30.3

自覚的健康度を健康(非常に健康+健康)と非健康(非常に悪い+悪い+ふつう)に2区分し、各生活習慣との関連性を調べた。5%有意水準で有意の関連が認められたのは、仕事活動度、歩行時間、スポーツ(夏、冬、強度「4METs以上」、ここ1年および40歳代のすべて)、生活リズム、睡眠不足感(40歳代も)、ストレス(40歳代も)であり、食習慣、喫煙、飲酒、
睡眠時間、休暇取得には関連がみられなかった。
自覚的健康度と各種要因との多変量ロジスティツク回帰分析を行い、AICが良好であった変数の組み合わせの一例を表2に掲げる。

表2
従属変数を自覚的健康度とした
各種要因のロジスティツク回帰分析
変 数

スポーツ夏
スポーツ冬
生活リズム
睡眠満足感
ストレス
内科疾患
持久力
筋力
年齢
オッズ比

1.5214
1.0625
.9303
1.4832
1.4506
3.6490
1.5747
.9569
.9123
95%信頼区間

(1.0460, 2.2129)
(.7029, 1.6063)
(.5228, 1.6554)
(.9183, 2.3955)
(.9756, 2.1568)
(1.9560, 6.8072)
(1.0137, 2.4460)
(.6315, 1.4500)
(.8068, 1.0315)

 

考 察

A社は北海道における大企業の一つであり、事務職、技術職、現場作業者等の種々の職種を抱えている会社である。労働者の労働環境は比較的恵まれている集団であるが、50歳代の自覚的健康度は健康あるいは非常に健康と回答するものが半数以下になり、その健康度に体力が重要な影響力をもっていることが明らかになった。表には示していないが、スポーツを40歳代から継続しているものの健康度が特に優れていた。
一般的にいわれている生活習慣(食事,睡眠、喫煙,飲酒等)は,意外に影響力がなかった。さらに小企業などの労働条件と比較することや、横断的研究だけではなく総統的研究の必要性が期待される。

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平成13年度産業保健調査研究報告書(概要)
事業場内メンタルヘルスケア担当者の問題事例への対応に関する調査研究(概要)
「心の健康づくり」についての実態調査


調査研究体制
北海道産業保健推進センター
所長 三宅 浩次(札幌医科大学名誉教授)
相談員 山村 晃太郎(旭川医科大学名誉教授)
  中野 倫仁(北海道医療大学心理科学部教授)
共同研究者 井上 蓉子(元埼玉県立精神保健総合センター主席精神相談員)
  豊島 眞(札幌カウンセリングセンター代表取締役)
  鎌田 幸子(健康保険組合連合会北海道連合会)
北海道医療大学看護福祉学部 教授    西 基

 

1.この調査研究の目的

心の健康づくりについて、各職場の担当者はどのように対応しているかを調べ、 働く人々の心の健康問題(別な言葉でいうとメンタルヘルス)への対策を考えよ うという目的で調査が行われました。

2.調査対象・方法

北海道内5,400事業場から系統無作為抽出で1,000事業場、北海道内産業医名簿2,1 00名から上記同様に417名、北海道内産業看護職名簿記載の全員149名を対象としま した。各対象者に調査票を郵送し、無記名で回答してもらいました。 有効回答数は、事業場208、産業医125、産業看護職82です。 調査票の最初のページに「この調査でお聞きする心の健康問題あるいはメンタルヘ ルス問題とは、次のような例としてお考えください」と精神疾患(精神科医受診者) 、精神疾患以外の健康問題(心療内科等の受診者)、職場不適応、対人関係で著しい 困難が生じた問題を大項目で示し、さらにそれぞれに具体的疾患名、問題を例示しま した。

3.結果と考察

1) 事業場票:従業員数による規模は、100人未満が51%、1,000人以上は5所。業種 では、サービス業、製造卸・小売業で37%。職種では、現場従事が29%。営業・ サービスが20%。深夜業は「あり」が45%。回載者の48%が人事・労務担当者、 21%が衛生管理者、7%が事業主または役員。

2) 産業医票:担当事業場ありが97名(78%)、なしが28名(22%)。担当事業場の 従業員数(%は事業場有 対して)100人未満38名(39%)、1,000人以上6名 ( 6%)。担当年数は平均12年、年齢60歳以上が67%、精神科・心療内科は5名 (4%)。

3) 産業看護職票:担当事業場の従業員数は、100人未満10名(12%)、1,000人以上 24名(29%)(看護職は担当方法が複雑で従業員数は参考程度)。担当年数は平 均10年。

4) 事業場規模別(100人未満、100~499人、500人以上で3区分)での相違 小規模で事業主の63%がメンタルヘルス問題に関わる、大規模で労働組合の54%が メンタルヘルス問題に関わる。 対策25項目で有意差が認められたのは、目安箱設置の1項目だけ。意見31項目で有 意差が認められたのは、中・大規模で仕事量が増えて、小規模では減っている。 その他の大多数の項目では差が認められませんでした。つまり、心の健康関連では 事業場規模の影響が意外に少ない。

5) 各関係職のメンタルヘルスへの関与の度合い 職務別にメンタルヘルスヘの関与の度合いをききました。「ほとんどいつも関与」し ていると回答した率を事業場、産業医、産業看護職ごとに示します。

職務 事業場
208所%
産業医
97名%
看護職
82名%
直属の上司
人事労務担当者
事業主・役員
衛生管理者
労働組合
労働組合
産業看護職
心理関係職
12560.1
5727.4
3416.3
2411.5
178.2
94.3
62.9
31.4
3839.2
2525.8
99.3
2929.9
33.1
1717.5
1313.4
33.1
5364.6
2226.8
67.3
1113.4
22.4
3441.5
5769.5
911.0

事業場の回答で「ほとんどいつも関係」が60%と、直接の上司の関与度が大きい。事業主 ・役員の関与度は小規模事業場では大きく、中・大規模では「あまり関係ない」が多い。 産業医自身は「ほとんどいつも関係」が18%と少なく、衛生管理者の関与度(30%)のほう が大きいという。産業看護職は看護職自身(70%)と産業医(41%)の関与が大きいとい う。別の質問項目で、産業医が「心の健康問題に産業医がもっと関わるべきだ」(52%)とい っていながら、「産業医にメンタルヘルスを関わらせるのは無理だ」(23%)という意見も あり、「一般産業医を対象としたメンタルヘルスの研修をもっと増やす」(71%)と積極的 な面も見られ、産業医が専門以外に関わることに苦悩している姿がうかがわれます。 なお、事業場における衛生管理者が「いる」率は82%、産業医を選任している率が86%、産 業看護職が「いる」率が21%、心理関係職が「いる」率が6%でした。

6) 外部メンタルヘルス機関との連携 外部メンタルヘルス機関との関係を事業場と産業看護職の調査票で尋ねました。精神科ある いは精神病院との連携は、事業場の9%があると答え、看護職では62%があると答えています。

7) 平成12年に厚生労働省が示した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」 (いわゆるメンタルヘルス指針)について知っているかを尋ねましたが、事業場では19%、産 業医では38%、産業看護職では76%の周知度でした。(なお、この指針について知りたい方は、 本推進センターに申し入れてください)

8) メンタルヘルス対策実践率 次のような対策を行っていますか、という質問で、「行っている」と回答した率を実践率とし ます。事業場の担当者と看護職にきいています。
対策項目
実践率(%)

事業場 看護職
レクリエーション・社内行事での工夫
スポーツ・運動・体力づくりの奨励
事業主や所属長の訓示等で表現
作業ミスについて原因や対策の検討組織
休暇、休憩時間の活用を奨励
直接の上司を超えての上への訴え容認
衛生委員会等の議題として
新入社員研修のプログラムとして
年間方針または計画等で明記
管理職研修のテーマとして
ストレス解消法の冊子配布等の啓蒙活動
フレックスタイム制度等勤務時間の工夫
一般従業員研修のテーマとして
ストレス軽減の作業環境(例:BGM、色彩調節等)
労働組合へのかけこみ
休職者の復職判定制度(規定や判定委員会等)
社是として明記
相談組織・体制の設置・整備
メンタルヘルス問題者の配置転換制度
目安箱の設置による意見・苦情の吸い上げ
E-メールによる相談、意見の吸い上げ
原則として残業時間の廃止
禁煙教室・節酒講座等の開催
職場や作業のストレス評価・チェック制度
健康づくり対策委員会等の実践組織
61.2
50.0
47.6
46.6
42.8
37.0
36.1
32.7
30.3
24.5
23.6
23.6
23.1
20.2
20.2
19.7
18.8
18.8
17.8
16.3
11.5
11.5
9.1
8.2
7.7
62.2
73.2**<
41.5
25.6**
58.5*<
30.5
43.9*<
52.4**<
39.0
54.9**<
62.2**<
32.9
42.7**<
9.8
43.9**<
50.0**<
14.6
45.1**<
42.7**<
15.9
39.0**<
29.3**<
28.0**<
19.5**<
28.0**<


(最右欄の**は事業場と看護職の回答率に統計学的有意差があることを示す、
<は看護職のほうが高率であることを示す)

事業場の回答では、「レクリエーション・社内行事での工夫」と「スポーツ・運動・体力づくりの 奨励」だけが半数を超えていましたが、産業看護職の回答では、6項目が半数を超えていました。 全体にメンタルヘルス対策の実践率は低い状況です。

9) 記載者個人の意見や考え方 5段階のスケールで31項目について事業場と産業看護職にききました。両者ともメンタルヘルスにつ いては積極的な対応が見られますが、特に看護職のほうがより積極的な回答をしています。 31項目の因子分析を事業場調査票で計算し、意見・考え方の構造を検討しました。主因子法、バリマ ックス回転の結果、9因子を抽出しました(累積寄与率43%)。第1因子は「ラインでのケア重視」、 第2因子は「セルフケア重視」、第3因子は「仕事の公平性」と解釈されました。厚生労働省で示した メンタルヘルス指針(最初はセルフケア、個人が自分で気づくこと、2番目にラインによるケア、上司 をはじめ周りが気づくこと、3番目に事業場内のメンタルヘルス関係者のケア、4番目に外部のメンタル ヘルス機関でのケア)と最初の2因子は符合しています。 因子分析結果から各人の得点を求め、事業規模別に比べたところ、小規模の事業場ではメンタルヘルス 対策は良好で、200人から500人くらいの中規模の事業場では、よくない状況が見られました。規模が大 きくなるほど、メンタルヘルスの問題を個人的なことより 集団重視の傾向が強く、要するに冷たいという解釈ができます。

10) メンタルヘルス問題で困ったこと 過去に困ったことがあったものも含めると、事業場では35%、産業医で45%、看護職で83%でした。いず れの群も「うつ症状」が最多で、産業医と看護職にきいた困難な項目では、「プライバシー問題」が最多 でした。産業看護職がメンタルヘルス問題で一番悩んでいます。

11) 産業看護職の「いる」事業場と「いない」事業場 看護職の役割が重要という結果から、次に看護職が「いる」職場と「いない」職場を比較しました。業 種では、医療・福祉で「いる」という回答が多く、他の業種では看護職が「いる」率に差は認められません 。従業員規模では200人以上の事業場で「いる」が多く、対策項目の実践率でも10項目で、「いる」事業場 が高い。8)と同様です。産業看護職の役割をさらに重視し、活用することがメンタルヘルス対策で効率的 であることが分かります。

12) 休職者の有病率 従業員数を記入した事業場(203所)について、全休職者数、そのうち「心の健康問題」での休職者数、 「心の健康問題」で入通院者数を分子にして、従業員総数で除して、1,000人当たりの有病率を求めました。

種々の病気を含めた休職者全数では、事業場の規模による違いが明らかですが、メンタルヘルスでの休職率には規模の違いが見られません。患者調査などで推定される生産年齢での入院患者の率は、千人あたり5 くらいですから、全休職者の率は全国の数値と比べてあまり違いがないようです。メンタルな問題をもつ患 者さんは、少なくとも人口の1%以上といわれていることから見ると、一桁低い率になります。就職していな い方が多いこと、また多少の問題があっても職場ではメンタルな問題として休職や入通院の数として把握さ れていないためと思われます。

13)自由意見にも積極的な提案が多数見られました。詳しくは本報告書をご覧ください。

おわりに 産業全体の変化が厳しい時代です。心の健康問題で悩んでいる方が増えています。心の健康問題は、悩んで いる人の個人的問題である以上に事業場の効率にも大きな影響を及ぼす重大な問題です。参考にしていただ ければ幸いです。さらに詳しい報告内容を知りたい方は、本推進センターに申し入れてください。調査研究 報告書(約50ページ)をお送りします。

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メンタルヘルスのためのネットワーク形成に関する調査研究

調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所長 三宅浩次
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 山村 晃太郎、井上 蓉子
北海学園大学名誉教授 後藤 啓一


1.はじめに

事業場内におけるメンタルヘルスの重要性は、いよいよ高まってはいるが、現実の場面では多くの困難があり、解決しなければならない課題が種々残されている。本センターでは、13年度の調査で25項目にわたるメンタルヘルス対策について、わずか2項目で「行っている」という選択肢を選んだ事業場が半数を超えたにすぎない。その他、情報提供、研修等のいずれの項目も低率な実践率であった。 今年度の調査研究では、事業場内でのメンタルヘルス対策が進まない理由を検討するために産業心理学の視点から分析を試みたこと、また、精神科臨床などの側からの視点を加え、今後のメンタルヘルスのための方策を探ることを目的とした。。

2.調査対象・方法

本センター保有の事業場名簿約5000所から系統無作為抽出で1000所を選び、調査票を郵送した。222所から有効な回答が得られた(R群)。回収率が低いが、昨年度も低くて礼状を兼ねた督促状を配布したが、数通の追加にすぎず、効果が認められなかったので、本年度は督促をしていない。その代わり、某団体の協力で102所の追加を得た(S群)。この2群の相違を検討したが、各種項目でわずかに差が見られたところもあったが、両群とも北海道の全体から大きな偏りはないものと考え、両者合わせて集計した。 事業場調査票は、最初にはメンタルヘルス問題を定義して示し、項目としては、業種、従業員数、業況評価、従業員規模の変更、マネジメントの重要課題などの事業場特性を調べる項目、心の健康に関する具体的な取り組みに関する項目などで構成した。 精神科・心療内科調査票は、本センター保有の名簿から精神科92、心療内科37、両者標榜19の医療機関の長に宛て郵送し、36通の有効回答を得た。調査票は、12ないし13問で構成され、職場からの紹介、調整、産業医との連携などを質問した。

3.対象事業場の特徴

事業場の業種では、製造業(19%)、建設業(18%)が多く、北海道内の産業構成からも大きな偏りはないものと考えられる。従業員数による規模では、名簿作成時には50人以上の事業場であったが、50人未満に縮小されたところが17%もあり、500人以上は5%と中小規模の企業が多い。 業況の認識については、悪いとするものが44%と最も多く、各項目とも経済不況の厳しい情勢が伺われる。この2年間に正職員削減を行った事業場が38%に達している。

4.事業場調査の主な結果

4.1 メンタルヘルス指針の周知度 平成12年度に公表された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(いわゆるメンタルヘルス指針)について知っているかを尋ねたが、同様な質問をした13年度に比べ、「知っている」と答えたものが19%から30%に上昇し、「知らない」と答えたものが29%から18%に減少した(図1)。


メンタルヘルス指針周知度

4.2 メンタルヘルス対策項目の実践率 メンタルヘルスの対策を講じているかを、10項目尋ねた。「行っている」と答えた実践率は、全体的に低率であり(図2)、13年度の調査で尋ねた同種の項目とほとんど同率であり、変化が見られない。

メンタルヘルス項目実践率

4.3 心の健康に関する外部機関の周知度 外部機関の8種について周知度を「知らない」、「知っているが利用していない」、「知っていて利用している」、「知っていてすすめている」の選択肢で尋ねた。「知っている」と答えたものの率(周知度)は、保健所と医療機関は66%と高いが、精神保健福祉センター31%が低い。産業保健推進センターは54%、地域産業保健センターは50%であった。

4.4 マネジメントにおける重点課題 マネジメントについて28項目から重要と思われる課題を5題選ばせた。クラスター分析の一種であるマッキティの方法で1.コスト削減/売上高、2.企業理念/開発、3.人事/再編の4つのクラスターに分けられた。各クラスター間には負の相関がある。

4.5 メンタルヘルスの困難経験 心の健康問題で困っているかを尋ねた。現在あるが20%、かつてあったが17%であった。両者合わせて37%で、13年度調査の35%とほぼ同じであった。困難経験者のうち、「うつ症状」62%、「対人関係」35%、「職場不適応」34%、「統合失調症」12%と回答している。

5.経営関連指標とメンタルヘルス対策の関連

メンタルヘルス対策10項目について「行っている」を1点、それ以外を0点として合計した(これを対策得点とする、中央値は1点)。指針を知っている群は、いずれのメンタルヘルス項目とも有意の関連がみられた。経営関連指標のうち、業況が悪いという事業場では、メンタルヘルス対策得点と負の関連がみられたが、業況が悪いと正職員削減と関連し、それがメンタルヘルス対策得点と正の相関関係にある。また、「メンタルヘルス指針を知っている」、「心の健康問題で困難経験」が対策項目と関連しているので、上記の「業況悪い」、「正職員削減」を加えた5要因でパス解析を行った。一応、各要因間の関連は認められたが、外的要因の寄与が大きく、経営指標がメンタルヘルス対策に影響することはあるが、小さいと考えられる。 同様に、前述の重点課題28項目のクラスターで最もメンタルヘルスに関連したのはコスト削減/売上高という経済的側面を重視する事業場でメンタルヘルス項目が十分でないという結果であったが、これもその寄与率は低く、経済的理由ではメンタルヘルス対策の低いことを説明するには不十分と考えられる。

6.精神科・心療内科調査の主な結果

精神科から29通、心療内科から7通の回答が得られた。入通院患者のうち職場からの紹介患者は、「いない」が22%、「1~5人」が47%と少ない。疾患としては「うつ病(あるいはうつ状態)」が69%、「統合失調症」が28%、「神経症」が25%であった。紹介元の担当者は、人事労務担当者が64%と多く、産業医11%、保健師・看護師19%と、まだ専門職が活かされているとはいえない。 勤務先に内密に受診する患者は、「ほとんど」が25%、「半分くらい」が39%、「少ない」が33%と回答している。その他の質問においても、職場との連携が、まだ不十分であり、今後の方策を検討しなければならない。
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メンタルヘルス担当者の役割認識と意見に関する調査研究
-特に上司の役割の重要性について-

調査態勢
研究代表者 北海道産業保健推進センター所長 三宅浩次
共同研究者 北海学園大学名誉教授員 後藤 啓一
北海道産業保健推進センター相談員 山村 晃太郎、井上 蓉子


1.はじめに

平成13,14年度に行ったメンタルヘルスに関する調査研究においてメンタルヘルス担当者の役割としては、直属の上司がもっとも関与の度合いが大であることが明らかになった。 そこで、15年度には北海道内の事業場から協力を得た7社21職場の従業員を対象として、仕事上の上司関係に焦点を当てた調査票を作成し、調査を行った。 その結果、管理職、部下もち非管理職(以下、中間職)、部下がいないものの3群や、職場単位で不満の大中小の違いなどについてメンタルヘルス対策上重要な所見が得られた。

2.対象と方法

協力を得られた企業は、製造業、電力関連事業、運輸業、サービス業など各種にわたり、回答従業員数は、432名であった。 調査票は個人属性、上司部下関係の態度(1.上司に相談をもちかけたときの上司の態度、2.統計数理研究所「日本人の国民性」調査のドライな課長と人情課長)、最近の心身状態(症状)25項目、上司と同僚の支持的傾向3項目、仕事負担度4項目、自由裁量度3項目、勤務状況5項目、仕事、職場、家庭の満足度で構成した。調査票はプライバシー保護のため各人封筒に入れ封をして職場ごとに大封筒で回収して返送された。 解析はEXCEL および SPSS を使用した。

3.結果および考察

3.1 上司部下関係の態度嗜好 上司に助言を求めたときの上司の態度を5つの選択肢(具体的な会話)から選ばせる方法で、1.評価的、2.支持的、3.解釈的、4.共感的、5.探索的と分類した。全体としては、探索的態度への嗜好が52%と多く、カウンセリング手法として推奨される傾聴的態度に相当する共感的態度については16%しか選ばれなかった。 統計数理研究所が行っている「日本人の国民性」調査で、仕事以外では面倒をみない上司と無理な仕事をさせるが仕事以外でも面倒をみる上司のどちらを好ましいと思うか選択させる質問で、75%が人情課長型を選んでいる。

3.2 上司や同僚のサポート 上司や同僚の支持の度合いを「気軽に話せる」、「困ったとき頼りになる」、「個人的問題の相談」の3項目を各3段階で選択させた。

3.3 最近の勤務状況 ここ1か月の時間外労働は、62%が45時間以内と答え、3%が80時間を超えたと答えている。

3.4 満足感 仕事、職場、家庭についての満足感を4段階で選択させた。仕事、職場それぞれ満足59%、不満41%、家庭では満足88%、不満12%であった。

3.5 合成尺度による職場ごとの平均値 以上の項目から上司・同僚のそれぞれの支持感を3項目の合成点で7段階、仕事負担度を4項目から9段階、仕事の自由裁量度を3項目から7段階、仕事と職場の不満感から職場仕事不満感を7段階、心身状態25項目から「抑うつ」、「攻撃」、「身体」、「行動」、「対人」の5項目に集約して8段階の尺度を作成した。各尺度を個人別さらに職場別に算出し、種々の属性要因との関連を検討した。 図に各尺度間の順位相関係数を示した。職場単位と個人単位で多少の相違が見られる。職場仕事不満度は上司非支援度の影響が大きく、仕事負担度は無関係であった。職場仕事不満度は抑うつ症状、攻撃的傾向に影響を与える。仕事負担度は直接に攻撃的傾向、身体的症状に影響を与えるが、個人単位では弱く、職場単位としての影響が大きい。

3.6 職場仕事不満度別職場の特徴 職場仕事不満度の大きさで不満大の7職場、中間の9職場、不満小の5職場の3群にまとめ、各属性との関連を検討した。管理職については、不満小の職場では勤務年数20年以上と長いものが多く、年齢も高い。すなわち、年功序列型である。それに対し、不満大の職場では勤務年数3~15年が多かった。不満小の職場の管理職は、部下に対し共感的であるが、上司に対してはむしろ共感的ではない。それに対し、不満が大きい職場の管理職は、部下に対して9人中1人も傾聴的タイプを選んでいない。また、不満大の職場の管理職は、上司に対し人情課長型を嗜好している。 中間職では、人情課長型を選ぶ率が不満度小ほど多く、不満大の職場では人情型とドライ型が拮抗している。不満大の職場の中間職は、症状が多い。 部下のいないものたちは、不満小の職場では、勤務年数が15年以上と長いものが多く(41%)、逆に不満大の職場では、勤務年数3年未満と短いものが多い(42%)。不満大または中の職場では、多数の症状が見られ、仕事の能率が低下していることを推察させる。上司との関係も不満が大きい。しかし、同僚は支持的である

4.まとめ

事業場のメンタルヘルス担当者としてもっとも最初に対応する上司と部下との関係に焦点をあて、7社21職場の432名の調査票を解析した。相談をもちかけられた上司の対応として5タイプの中から望ましいタイプを選ばせたが、傾聴的態度を選んだものは16%であった。職場仕事不満の小さい職場の管理職は、部下に対しての選択では傾聴的タイプを30%が選びながら、上司に対しては選んでいない。ドライな課長と人情課長の選択では、人情課長を選ぶものが全体では75%であった。不満の小さい職場の中間職では人情型を選ぶものが多く、不満の大きい職場ではドライ型と人情型が拮抗している。 職場仕事不満の少ない職場の管理職は、勤務年数20年以上が多く、年功序列型の体制を維持している。 職場仕事不満にもっとも影響が大きい要因は上司のサポートであり、仕事の裁量度の影響はわずかである。職場不満は、抑うつ、攻撃傾向、身体症状の増加に影響している。 以上、職場では上司がメンタルヘルスに果たす役割は、きわめて大きい

図職場・仕事不満度との要因関連図(数値は、スピアマンの順位相関係数)(数値の左は職場単位、右は個人単位

要因関連図

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生活習慣と健康意識に関する調査研究(要約)
-特にストレス認知と処理の視点から-


調査態勢
主任研究者 北海道産業保健推進センター所長 三宅浩次
共同研究者 札幌医科大学医学部公衆衛生学講座 小林幸太、森満
共同研究者 北海道産業保健推進センター相談員 後藤啓一、山村晃太郎

1.はじめに

当センターでは、平成13,14,15年度にわたり、事業場のメンタルヘルスに関する調査研究を行ってきた。その結果、事業場におけるメンタルヘルスにもっとも関わるのは、直属の上司であること、従業員のメンタルヘルスには個人的問題よりも職場の問題、特に上司の対応の仕方が重要で、その不満がうつ症状や攻撃性、さらに生産性に関連する項目に影響を与えていること、また景気の悪さは直接メンタルヘルス対策に関係ないことなど、種々の関連が明らかにされた。
本年度は、メンタルヘルス、特にうつ症状の項目、その対処の仕方、生活習慣等について、従業員から直接、質問紙による調査で回答を得て、メンタルヘルスとその関連要因を解析した。

2.対象と方法

調査対象は、北海道内の事業場従業員である。当センターの事業場名簿5,760所から系統無作為抽出で100所を選び、研究協力依頼文を各事業場担当者あてに送付した。11企業が調査対象として参加した。協力企業の担当責任者に対して、調査手順、個人情報保護についての配慮等を記載した依頼文と対象人数分の個人調査票を送付した。各個人へは各企業の担当責任者から配布し、各個人は回答した調査票を添付の封筒に入れ、封をして担当責任者に返却した。配布した調査票は、3,057票、回収された調査票は、2,368票(回収率77.5%)、そのうち性別不詳等で除いて集計に使用した有効票は、2,321票(有効回収率75.9%)であった。

3.調査結果と考察

3.1 対象者の属性の主なものを表1に示す。
表1 対象者の属性
対象数
総数 2,321
男1,354
女967
平均年齢
41.3 歳
37.9 歳
学歴 高校卒業
30%
30%
短大、専門学校
8%
48%
大学卒
56%
17%
職種 事務
19%
18%
専門・技術・営業
51%
67%
その他(主に現業)
29%
15%

3.2 生活習慣、満足度、仕事内容、うつ症状 生活習慣に関して、朝食摂取、栄養バランスの配慮、睡眠満足度、運動習慣、喫煙、飲酒とその酔いの程度、趣味等有無の7項目を4肢選択で調べ、得点化した。満足度として、健康、仕事、職場、家庭について4肢選択で調べ、仕事と職場の満足度を得点化した。仕事の身体負担、量、集中度、裁量度、やりがいについて主観的評価を4肢選択で、上司、同僚、家族・友人の支援度を4肢選択でそれぞれ調べた。 うつ症状をCES-D 20項目で、対処関係として、LOC18項目、コーピング(尾関)14項目の質問を施行した。これらの各項目間の関連を解析した。
表2 生活習慣
朝食:
毎日 59%
食べない 7%
栄養:
気をつける 23%
いない 6%
睡眠:
満足 20%
不満 11%
運動習慣:
している 11%
しない 27%
喫煙:
吸わない 38%
毎日37%
飲酒:
飲まない 24%
毎日 30%
酔い程度:
ほろ酔い 31%
相当に 7%
趣味等活動:
している 34%
ない 65%

表3 満足度
悩み聞く:
上司 17%
同僚 29%
家族・友人 53%
付合い満足:
上司 21%
同僚 28%
家族等 56%
仕事満足度:
満足 61%
不満 38%
職場満足度:
満足 51%
不満 48%
家庭満足度:
満足 83%
不満 15%
自身の健康:
満足 56%
不満 44%



3.3 生活習慣とうつ症状の関連

生活習慣とうつ症状の関連


3.4 仕事・職場満足度とうつ症状の関連

仕事・職場満足度とうつ症状の関連


3.5 対処とうつ症状

LOC 四分位 問題解決型対処 四分位

回避型対処 四分位 情動解決型対処 四分位

LOCの内的制御(自律的)が大きいほど男女ともうつ症状の平均値は小さい。問題解決型も情動解決型も大きいほど男女ともうつ症状の平均値は小さい。回避型では男女で相違する。

3.6 仕事・職場不満度と関連する変数上司の支援が良くないと仕事・職場不満度が増す(寄与率29%)。仕事の裁量度が小さいとやりがいを失い、仕事・職場不満度が増す。身体負担、仕事量、集中を要する仕事では、個人レベルでは関連が薄い(寄与率10%以下)。職場単位のレベルでは、身体負担が大きいと同僚の支援が増し、集中度が大きいと家族等の支援が増す。

4.むすび

・ 北海道の 11 企業の従業員 2,321 人を対象。
・ 生活習慣が良好なほど「うつ症状」は少ない。
・ 仕事と職場に不満があると「うつ症状」が大。
・ 上司の支援の悪さ、仕事の裁量の小さいことが「やりがい」をなくし、不満を増やす。
・ 心身両面からの健康管理と管理職の再教育が重要である。
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